今年最初に読んだのは、ただいまときの人となっている
齋藤孝さんの書いた『コミュニケーション力』(岩波新書)。
どうも私には、あんまり売れている人、あんまりドンドン本を書いている人の本は
読む気がしないという、良いのか悪いのかわからない癖があります。この齋藤さん
についても同様で、手をつけていなかったのでありますが、この本はなかなか面白かった。
・コミュニケーション力の基本は「文脈力」、いわば、やり取りされている内容の
構造を常に把握しながらコミュニケーションを展開する能力にある
・コミュニケーションを支える基盤は、体全体という意味での「身体」である
あたりをベースとして、コミュニケーション能力を高めるための訓練法や指導法
について、いろいろと提案してくれてます。ゼミなどで試したくなるものが多い。
その具体的な方法の中で、とくに面白かったのは「メタ・ディスカッション」というもの。
あるグループがディスカッションをしている光景を、別のメンバーが「上から眺め」つつ、
ディスカッションの流れ(文脈)をつかみ、評価を行う、そして後にその評価を公表するというもの。
ときどき、下と上のメンバーを交代することも効果的ということだ。これ、そのうちやってみよう!
また議論を行う際に、相対的な位置関係、空間の利用法が大きく議論の内容に影響し、
したがってそのデザインセンスが問われるという考えについても、とても共感できる。
うん。おもしろい。この人の本、いろいろ読んでみることにしよう。
コミュニケーションはやはり楽しみのもとだ。いろいろなコミュニケーションの形があるので、
別にみんなが同じようなスタイルでやりとりしあう必要はない。(そうだとまた気持ち悪いし、
面白みもへるだろう。) けれど、いざというときにいろいろなプロトコルを利用して、いろいろな
人とふれあうことができるというのは悪くない。素敵だ。
それにしても、このコミュニケーション能力の重視は、一種の流行でもあるようです。
基本は人と人(生き物)のやりとりだから、今後ともコミュニケーション力が軽視されること
ないとしても、よりとされるスタイルや作法は、は刻々とかわっていくのでしょうね。
30年後にはどのようなコミュニケーション能力が要求されるのか...。
そのあたりには敏感にならねば。