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June 14, 2007

西垣通さんの本

西垣さんが怒っている。

西垣通さんの『ウェブ社会をどう生きるか』。
この本の中では主に『ウェブ進化論』が痛烈に批判されている。
(この人は、情報とは何かについて、ずーっと考えてきた情報学者。作家。
 『こころの情報学』、『基礎情報学』、参照。)
 

主な主張は以下のとおり。

・ウェブでなんでも「情報」が検索できるという考え方には、
 情報の定義からいって、根本的な誤解がある。
 それを認めることは、基本的に人間を機械とみなすことに等しい。
 (これは鈴木謙介さんが懸念する「宿命」問題とも通じていると思われ。)

・人間の検索等の行為の集積によって、
 あるいは機械的なアルゴリズムによって、
 「知恵」「英知」が自動的に創られることなんかありえない。

・「ウェブ礼賛論」は「アメリカニズム」にのっかった(のせされた)ものだ。
 結局、フラット化ではなく、格差拡大の方向に社会は進む。

そして、
・人同士で、「しみ込み型」の学びあいが
 できような「場」(例えば「地域メディア」)をつくるためにこそ、
 ウェブは使われるべきである。
という締め。

最終章なんかでは、かなり過激な
怒りをあらわにした表現がポンポン飛び出す。
え〜、そこまで書いちゃうのってくらい。

私自身は、上の最後のポイント(場を創造すべし)
についてはおおいに賛成。
ウェブは単に知識を得るための、あるいは生き方の
選択肢を自動的に教えてくれるものなんかではなく、
コミュニケーションに深みをもたらすためのメディアだと思うから。

ただし。
現在のウェブをめぐる状況においても、
西垣さんの言うような「場」を創るために
利用できるものが提供されているし、
実際、意識的にそういった「場」を作り出そうとする
試みもなされていると思う。
というか、そこまで含めての「ウェブ礼賛論」のはず。
そこまで批判しなくてもいいのでは?と感じられるのだけれど。
 
 
結局、我々自身がいかに理解・自覚して、ウェブに望むか、だ。
 
 
でも、あえての警告の書なのでしょう。
たしかにこの本を読んでおくと、
昨年あたりから山のように出版され、
またこれからも続々とでてくるであろう一連の書物を
読むときに、バランスを保つ余裕ができると思う。
そして、「自覚」を持つ上でも。
 
 
これから批判きつめな本が流行するかもしれないな。
 
 
というわけで、今日はややかため。

(修正あり)

[ 教員 ]
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投稿者 53 : June 14, 2007 06:48 PM
コメント

俺読むべきっぽい感じですかね
ってかよまなきゃないと思うなら読めって話ですけど…時間決まってるんだから読める冊数決めなきゃないんですがみんなつまみ食いみたくなって。どうしたものだか〜

Posted by: 前野 at June 14, 2007 11:28 PM

>前野君

う〜ん、前野君がかかえている
テーマに関して言えば、この本より
『ウェブ社会の思想』
が関係ありそう(第5章)。

>時間決まってるんだから読める冊数決めなきゃ
>ないんですが

読み方をかえるという手もありますぜ。だんな。
そういうときこそ、実はよいチャンスだったり
する・・・かも。

Posted by: 53 at June 15, 2007 12:29 PM

ここ2日ほどの梅田さんのブログ
(「My Life Between Silicon Valley and Japan 」)
へのリンクをはっておきます。

ここで彼が述べている「批判」が
西垣氏のもの含んでいるかどうかは
判然としない。
でも、彼自身が
おそらくは多くの批判を受け止める中で、
自分自身を見つめるために、
自分の行為の意味を考えるために、
自分のコアとぶれを確認するために、
そして決意するために、
書いているのがよく伝わってきます。

「最近つくづく思うこと」
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20070614/p1
「サバイバルのための人体実験を公開すること 」
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20070615/p1


Posted by: 53 at June 16, 2007 12:13 AM
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